金融庁「取締役会の機能強化の取組みに関する事例集2026」を読む 24社の事例を5部で整理、出発点は取締役会のあるべき姿

金融庁は2026年7月21日、改訂コーポレートガバナンス・コードの確定と同じ日に「取締役会の機能強化の取組みに関する事例集2026」を公表した。プライム市場・スタンダード市場の上場会社24社へのインタビューを基に、取締役会の機能強化の取組み例を5部でまとめた資料で、2025年6月2日公表の事例集に新しい事例を加えたものである。改訂コードが掲げる「形式から実質へ」を企業行動の水準で確かめられる資料であり、本記事では全体像と3つの潮流、そしてどこから読むかを整理する。

事例集の構成 24社の取組みを5部で整理

  • 改訂コーポレートガバナンス・コードの確定(2026年7月21日)と同じ日に金融庁が公表した。
  • プライム市場・スタンダード市場の上場会社24社へのインタビューに基づく。
  • 構成は5部。Ⅰ取締役会の役割・責務(在るべき姿と経営陣との役割分担、機関設計ごとの取組み、CEOサクセッション)、Ⅱ社外取締役に関する取組み(社外取締役同士の交流と投資家との対話、執行側・事務局との信頼関係、知見の活用)、Ⅲ取締役会事務局の組織・体制・役割(組織上の位置づけ、事前準備、情報の非対称性の解消)、Ⅳ取締役会の実効性評価(位置づけと外部機関の利用、評価対象と意見収集、評価結果の活用と開示例)、Ⅴその他(サステナビリティ、コーポレートカルチャー、レジリエンス、人的資本経営)。

事例が示す3つの潮流

1. モニタリングボードへの転換

多くの会社が、執行側への権限委譲と付議基準の見直しによって、取締役会を個別案件の決裁の場から大局的・戦略的な議論の場へ転換しようとしている。重要なのは議題を減らすことそのものではなく、空いた時間で何を議論するかを合わせて設計している点である。

2. 実効性評価のPDCA化

内部評価と外部機関による評価を組み合わせ、評価を毎年の儀式ではなく、課題の抽出と改善のサイクルを回す道具として使う会社が目立つ。評価結果を翌年の取締役会運営の具体的な変更につなげられているかが分かれ目になる。

3. 取締役会事務局の強化

専任組織化やコーポレートセクレタリーの設置により、社外取締役への情報提供や議題設定への関与を担う能動的な事務局への転換が進んでいる。改訂コードが今回明記した事務局への期待と対応する動きである。

どこから読むか 出発点は取締役会のあるべき姿

事例集は、個別施策のハウツー集として部分的に読むこともできる。しかしその読み方では価値の大半を逃す。取締役会の機能強化には順序があるからである。出発点は、自社がどのような取締役会を目指し、どのような役割・機能を果たすべきかを定めることにある。ここが定まらないまま、事務局の強化や評価手法といった個別施策を取り入れても、機能強化は積み上がらない。

実務への示唆

  • まずⅠ「取締役会の役割・責務」から読む。自社の取締役会のあるべき姿を考えるうえで参考になる点が多い。この点を明示的に言語化し、体系的に整理できている会社は実務では決して多くなく、だからこそ取り組む価値があり、自社のガバナンスの根幹を考え直す機会になる。
  • あるべき姿を定めたうえで、Ⅳの実効性評価を「あるべき姿と現状のギャップを測る道具」として位置づける。次回の評価の設問設計に事例集の観点を取り込むことが考えられる。
  • 付議基準の見直しや事務局の強化などの個別施策は、この出発点に接続してこそ効果を持つ。来期の体制計画への反映を検討したい。

出典:金融庁「取締役会の機能強化の取組みに関する事例集2026」(2026年7月21日)

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(ガバナンス・ダイジェスト編集部)

文:ガバナンス・ダイジェスト編集部

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