取締役会事務局の職能確立へ、日本コーポレートセクレタリー協会が発足 正会員51社

取締役会事務局の職能確立へ、日本コーポレートセクレタリー協会が発足 正会員51社

日本コーポレートセクレタリー協会(Japan Corporate Secretary Association、以下「JCSA」)が10月30日付で設立された。取締役会の運営を支える実務家が企業の枠を超えて知見を持ち寄り、日本企業に適した「コーポレートセクレタリー」(議長やCEO、社外取締役との対話や調整を担う専門人材)の職能を確立することを目指す団体で、事務局は公益社団法人商事法務研究会内に置かれる。10月30日現在、社名を公表している正会員は51社である(注1)。

取締役会事務局を点検する三つの問い(編集部の整理)
取締役会事務局を点検する三つの問い(編集部の整理)(ガバナンス・ダイジェスト編集部作成)
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何が起きたか

  • 10月30日付で設立された。代表理事に佐久間総一郎氏(日鉄ソリューションズ 顧問)、副代表理事に松倉肇氏(日本電気 Senior Adviser)と野島嘉之氏(三菱商事 代表取締役 常務執行役員)が就いた。役員は理事・監事を合わせて8名である。
  • 活動の柱は四つある。人材の育成、実務家同士の知見共有、コーポレートセクレタリーの職能と取締役会運営の実務(アジェンダ設定、情報提供、議長支援、実効性評価など)の体系化、そして「ネクスト・プラクティス」の探求と発信であり、成果は調査・研究の公表や公開セミナーを通じて社会にも発信するとしている。
  • 正会員は10月30日現在で51社(社名公表を承諾した企業のみ)で、製造、商社、金融、通信、小売など幅広い業種の企業が名を連ねる。設立当初は会員規模を100社程度に限り、正会員の会費は入会金5万円、年会費30万円である。

ポイント

設立趣意書は、取締役会事務局を「組織として取締役会の運営基盤を支える」ものと、コーポレートセクレタリーを「専門人材として議長やCEO、社外取締役らとの対話や調整を行う」ものと書き分けている。そのうえで、多くの企業に事務局はあるものの、必要な機能が経営企画、総務・人事、法務、財務、IRなどに分散し、横断的に支える組織や人材が十分でない企業も少なくないと指摘する。英米の「Company Secretary」を参考にしつつも、制度をそのまま導入せず、各社の実務知を持ち寄って日本企業に適した形にするという。

背景には、制度の側でも事務局の位置づけが強まっていることがある。2026年7月21日版のコーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」)は、原則4-14(3)で、上場会社は取締役会を支える部署等の人員面を含む支援体制を整えるべきだとし、解釈指針では、事務局(コーポレートセクレタリー等)は事務方にとどまらず、審議事項を定めるなど会議体の運営を能動的に行うことが望ましいとしている。東京証券取引所(東証)も10月27日の公表資料で、改訂への対応を検討する企業から事務局の充実の進め方が分からない、限られた人員でどこまでできるか不安だといった声が寄せられていると紹介し、12月9日に事務局向けのセミナーを開く(受付は終了、後日オンデマンド配信の予定)。同資料が引用する日本IR協議会のアンケート(2026年9月30日公表、回答156社)でも、改訂への対応で課題と感じる事項として「取締役会事務局の機能強化(人材確保・育成)」を挙げた会社が39%あった。

実務への示唆

実務上のカギは、事務局の仕事を「運営」と「調整」に分けて見ることである。趣意書が事務局(組織)とコーポレートセクレタリー(人材)を書き分けているのは、日程や資料といった運営と、議題の設計や社外取締役への情報提供といった調整とでは、求められる人材も権限も異なるという認識の表れとみられる。

  1. 全体の司令塔機能が存在するか。例えば議題の設計を経営企画、社外取締役への事前説明を総務、取締役会の実効性評価を法務が担っているなど、事務局の役割を複数部署が分担しているケースがある。この場合、こうした複数の事務局業務を統括し、全体に整合性を持ちながら進める司令塔的な組織および人材が重要になる。本来は、こうした司令塔的な役割こそ、専任の事務局を設置し、実行できる体制が望ましいが、企業によっては通常業務と兼務しながらという場合もありえるため、機能の分散をしないようにする必要がある。
  2. 調整に必要な権限と必要な人材が確保できているか。協会は職能の「役割・責任・権限」を検討するとしている。事務局が議題案を議長に提案する、社外取締役が求めた追加の情報を各部門に出させる、といった行為の根拠が職務分掌にあるかどうかで、能動的な運営ができるかが決まる。また、スキルや専門性、マンパワーという観点から、事務局機能を担えるだけの十分な質と量の人材が確保できるかは極めて大事だ。
  3. 事務局機能の強化をコーポレートガバナンス強化の重要な取り組みとして位置づける。協会はガイドラインや事例集として成果を蓄積・発信するとしており、あくまで各社の中長期的な取組を支援することが基本スタンスとしてみられる。言い換えれば、一朝一夕に強化できるものではないという認識とも読める。事務局機能の強化は、単に実務を支えるということだけでなく、取締役会や各委員会の活動そのものの質を大きく左右する基盤ともいえる。そのため、まずはコーポレートガバナンス強化の観点で、事務局の機能強化が重要な取り組みであるということを、会社として位置づけ、中長期的な取組として推進していくことが第一歩である。

注

  1. 正会員企業は、設立のお知らせの資料2(2026年10月30日現在、社名公表承諾企業のみ掲載)による。会費と会員規模は協会ウェブサイトの入会案内と会員規程による(2027年3月31日までの初年度の年会費は免除、入会金は免除しない)。正会員の資格は、協会規約第5条第2項で、原則としてコーポレートセクレタリー等の機能を有し、その機能の高度化に取り組む会社その他の法人とされている。

出典

(ガバナンス・ダイジェスト編集部)

見出し画像:ガバナンス・ダイジェスト編集部作成

文:ガバナンス・ダイジェスト編集部

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