バッファロー、創業者一族が従業員と製造委託先の従業員に自社株を贈与

バッファロー、創業者一族が従業員と製造委託先の従業員に自社株を贈与
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リード

Wi-Fiルーターなどのパソコン周辺機器を開発・製造・販売するバッファロー(東証スタンダード・名証プレミア、6676)は10月23日、創業者一族で代表取締役の牧寛之氏が保有する普通株式10,700株を、国内グループ会社の従業員と、同社商品の製造委託先の従業員に贈与すると開示した(注1)。贈与日は10月29日の予定である。創業者一族の個人が、自社の従業員にとどまらず、取引先の従業員にも株を渡す点が特徴といえる。

何が起きたか

  • 贈与者と対象:創業者一族を代表する牧寛之氏(代表取締役)が、所有する株式の一部を、国内グループ会社の従業員と製造委託先の従業員に贈与する。主要株主の異動はない。
  • 目的:企業価値の持続的な向上と、株主との一層の価値共有である。従業員等が株式を持つことで企業価値や株価への意識を高め、企業価値の最大化に取り組む企業文化を育てるとしている。
  • 前回との違い:同社は2026年2月12日にも、国内グループ会社の従業員等に93,800株(株式分割後の換算で187,600株)の贈与を開示している。今回は10,700株と約18分の1に減る一方、製造委託先の従業員が対象に明記された(注2)。
株を渡す相手の広がりと、期待する変化の比較
株を渡す相手の広がりと、期待する変化の比較(ガバナンス・ダイジェスト編集部作成)

ポイント

今回の贈与は、会社が発行する株式報酬とは異なり、創業者一族の個人が保有する株式を渡すものである。開示が掲げる狙いは、受け手に株価への意識を持たせ、企業価値の最大化に向けた行動を促すことにある。受け手に起きる変化は、株価の上昇が自分の資産の増加になるという利害の一致である。

もっとも、同じ無償の贈与でも、受け手が変われば期待できる変化は異なる。従業員は、自らの働き方で株価に影響を与えうる立場にある。製造委託先の従業員は同社の従業員ではなく、報酬も同社から受け取らないが、品質や供給を通じて同社の業績に関わる。開示は、対象を広げた理由を述べていない。品質と供給に関わる人との利害の一致を深める意図が考えられる(編集部の推察)。

実務への示唆

実務上のカギは、株を渡す相手ごとに、渡す側が何を変えたいのかと、受け手に何が起きるのかを先に整理し、その狙いに合う形を選ぶことである。相手が従業員から取引先の従業員、顧客へと広がるほど、狙いは「株価への意識」から「株主の裾野づくり」へと移る。

  1. 従業員に渡す場合は、株価を自分の資産の問題にする。 受け手に起きる変化は、株価が上がると自分の資産も増えることである。バッファローの開示も、株価への意識を高めることを狙いに挙げている。ただし、売却すれば効果は消える。同社の開示は、売却の制限などの保有条件に触れていない。長く効かせたいなら、保有を続けやすくする仕組みが要る。会社が発行する譲渡制限付株式は、売却を一定期間禁じる制度で、この役割を担う(関連記事)。
  2. 取引先の従業員に渡す場合は、会社の外にいる人の利害を、自社の価値にそろえる。 製造委託先の従業員は同社の従業員ではなく、報酬は雇用主から受け取る。株を持てば、同社の業績や信頼が下がると自分の資産も減るため、品質や納期への当事者意識が高まる可能性がある(編集部の推察)。
  3. 顧客や一般の人に渡す場合は、株主の裾野を広げ、利用者を応援する立場に変える。 ZOZOの前身のスタートトゥデイは2009年1月、当時の代表取締役の前澤友作氏が保有する株式を、従業員等とその親族、運営サイトの一部の顧客に無償で譲渡すると開示した(注3)。目的は、前澤氏の持株比率(66.6%)を下げ、株主数と投資家層を広げることで、日頃の支援への感謝と、株主としての支援への期待も掲げた。従業員の意識づけが主眼のバッファローとは、狙いが異なる。受け手には、株価が上がれば資産が増えるという利益が生じ、会社への愛着が資産の形で残る。前澤氏は2026年10月、この譲渡で配った株が一時約100億円相当になったとXに投稿している。米実業家のイーロン・マスク氏は2026年10月19日、2027年に米国の子どもすべてにSpaceXの株を1株ずつ贈るとXに投稿した。1株は約150ドルとの報道の試算があり、1人当たりの金額は小さい。金額よりも、株主になる経験そのものが、企業や市場への関心を高める効果を持つ可能性がある(編集部の考え)。

注

  1. 同社は、2025年4月1日付で旧株式会社バッファローを吸収合併した株式会社メルコホールディングスが、株式会社バッファローに商号変更した会社である。事業は、デジタル家電とパソコン周辺機器の開発・製造・販売、データ復旧サービスなどである。証券コード3352の同名の上場会社とは別の会社である。
  2. 前回の93,800株は分割前の株数で、187,600株は編集部が2倍して換算した。発行済株式総数24,000,000株(自己株式292,256株を含む。2026年6月30日時点。2027年3月期第1四半期決算短信)に対する比率は、前回が約0.8%、今回が約0.04%である。贈与の株数と日付は、いずれも「予定」である。
  3. 開示によれば、譲渡する株式は上限2,020株(2009年3月の1株を3株とする株式分割後の換算)、対象者は上限2,020人、譲渡期日は2009年4月から6月、贈与税等は受け手が負担する。株数と人数の上限が同じため、1人1株とみられる(編集部の推察)。前澤氏の投稿にある金額(約2億円分、一時約100億円相当)は本人の投稿によるもので、開示に記載はない。

出典

(ガバナンス・ダイジェスト編集部)

見出し画像:Pexels/Andrey Matveev撮影(https://www.pexels.com/photo/production-line-of-computer-elements-5554948/)。図:ガバナンス・ダイジェスト編集部作成

文:ガバナンス・ダイジェスト編集部

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