東京商工リサーチの調査によると、2026年上半期に不適切会計を開示した上場企業は27社・27件と、件数自体は減少傾向が続いています。しかし内訳を見ると様相は一変します。売上の過大計上や架空取引などの「粉飾」が12件と、前年同期の3倍に急増しました。数字の裏で何が起きているのかを読み解きます。
何が起きたか
- 2026年上半期の不適切会計開示は27社・27件(前年同期比で社数3.5%減。2022年上半期の38社をピークに減少傾向)
- 内訳は「粉飾」12件(前年同期比3倍)、「誤り(会計処理ミス等)」12件、「着服横領」3件
- 市場別はスタンダード11社、プライム10社、グロース5社
- 業種別は製造業と情報通信業が各7社で最多。情報通信業は7件中6件が粉飾
ポイント
件数の減少を「リスクの減少」と読むのは早計です。粉飾の急増は、2025年に大型の粉飾決算が相次いだことを受けて監査法人の監査が厳格化し、これまで見えなかったものが「見つかるようになった」側面が大きいと考えられます。実際、過年度の不適切取引が後から発覚するケースや、海外子会社を含む複雑な取引での会計処理の誤りも指摘されています。
ガバナンスの観点で言えば、市場全体として「発見統制」が強化される局面に入ったということです。発見の網が細かくなるほど、隠れていた問題は表に出やすくなります。問われるのは、取締役会・監査役会による平時の監督の質と、発覚時の対応力です。
実務への示唆
- 監査法人の厳格化を「監査コストの増加」ではなく、発見統制の強化機会と捉え、監査役会・監査等委員会と監査法人の対話を深める。特に、監査人が「特に重要」と判断したリスクを監査報告書に記載する制度である「監査上の主要な検討事項(KAM)」は、自社のリスク認識と監査人の見立てをすり合わせる格好の素材になる
- 粉飾の温床になりやすい領域(売上計上基準、工事進行基準、子会社・海外拠点の取引)について、内部監査の重点テーマ設定を見直す
- 発覚時の初動──調査委員会の独立性確保、開示のタイミング判断──を平時に設計しておく。有事対応の質は平時の準備で決まる
出典:東京商工リサーチ「上場企業の不適切会計開示 27社・27件」
(ガバナンス・ダイジェスト編集部)

