モーター大手のニデック(東証プライム、6594)は10月16日、グループの一連の会計不正問題をめぐり、役員責任調査委員会から調査報告書を受領したと発表した。委員会は、創業者の永守重信氏や前社長の岸田光哉氏を含む現旧の役員8人に会社法上の損害賠償責任が認められると結論付け、会社は損害賠償請求などの法的措置を検討するとしている。

これまでの経緯
同社は2025年9月に第三者委員会を設置し、2026年3月3日の調査報告書の公表とあわせて役員人事を刷新した。同月13日には、2020年度から2025年度第1四半期までの取締役、監査役、執行役員の法的責任を調べる役員責任調査委員会(委員長:菊地伸弁護士、委員:松山遙弁護士、秋葉賢一・早稲田大学教授)を設置した。9月29日には岸田氏が社長を辞任している(関連記事)。
何が起きたか
- 委員会は、永守重信氏、小部博志氏、佐藤明氏、吉本浩之氏、関潤氏、岸田光哉氏、村上和也氏、落合裕之氏の8人に、会社法第423条第1項(役員等の会社に対する損害賠償責任)に基づく損害賠償責任が認められると結論付けた。
- 旧執行役員1人(2022年5月から2026年3月まで最高財務責任者)には、民法上の受任者の義務違反または執行役員規程に基づく損害賠償責任が認められるとした。損害の範囲は各人の寄与度に応じて判断されるべきだとしている。
- 会社は、第三者委員会と同委員会の調査、監査等委員会の監査の結果に基づき、「複数の取締役等において、その職務執行に関して法令に違反する事実があった」と認め、損害賠償請求等の法的措置を検討し、速やかに対応するとした。
- 報告書は、営業秘密と個人のプライバシーを保護する非開示措置を施したうえで、10月20日を目途に開示する予定である。
ポイント
8人には、創業者の永守氏、2026年3月に取締役会長を辞任した小部氏、いずれも代表取締役社長を務めた吉本氏と関氏、前社長の岸田氏が含まれ、歴代の経営トップが並ぶ。第三者委員会が3月の報告書で永守氏を「最も責めを負うべき」と評価した流れを、役員責任の認定として引き継いだ格好である。佐藤氏、村上氏、落合氏の3人について、公表文は役職を記していない。
会社の対応は現時点で「法的措置の検討」にとどまり、提訴の要否や請求額は報告書の開示後に判断される。同社は監査等委員会設置会社であり、取締役に対する責任追及訴訟では監査等委員会が会社を代表する(注1)。
実務への示唆
実務上のカギは、役員個人の責任調査を事実調査の第三者委員会から切り出し、その結論を公表してから会社の判断につなげた手順にある。
- 事実調査と責任調査を分ける。同社は第三者委員会(事実と原因)と役員責任調査委員会(個人の法的責任)を別に設け、後者に弁護士2人と会計学者を置いた。例えば、危機対応規程に、事実調査の報告後に責任調査の委員会を設ける手順と委員の要件を書いておくことが考えられる。
- 認定と提訴の判断を分けて開示する。同社は委員会の結論を先に公表し、提訴の判断を報告書の開示後に回した。例えば、「誰が調べ、誰が判断するか」の時系列を株主に示すことで、判断の独立性を説明しやすくなると考えられる。
- 監査等委員会の備えを平時に確認する。責任追及訴訟では社外取締役である監査等委員が訴訟の要否を判断する。例えば、監査等委員が外部の法律事務所を独自に起用できる予算と手続を、あらかじめ定めておくことが考えられる。
注
- 会社法第423条第1項は、取締役、会計参与、監査役、執行役または会計監査人が任務を怠ったときに会社に生じた損害を賠償する責任を定める。監査等委員会設置会社が取締役に対して訴えを提起する場合は、監査等委員会が選定する監査等委員が会社を代表する(会社法第399条の7)。
出典
- ニデック「役員責任調査委員会からの調査報告書の受領について」(2026年10月16日)
https://www.nidec.com/files/user/www-nidec-com/corporate/news/2026/1016-01/261016-01jp.pdf - ニデック「役員責任調査委員会からの調査報告について」(2026年10月16日)
https://www.nidec.com/files/user/www-nidec-com/corporate/news/2026/1016-02/261016-02jp.pdf - ニデック「役員責任調査委員会の設置に関するお知らせ」(2026年3月13日)
https://www.nidec.com/jp/corporate/news/2026/news0313-01/ - 関連記事:ニデック、岸田社長が辞任し戒田CTOが新社長に/特別注意銘柄・指定から1年/ニデック、新社長就任後の1週間
【追記 2026年10月20日】同日、ニデックは報告書の公表版を公表した。損害約276億円の認定や、減損の別枠処理をめぐる経緯など、報告書の内容は続報「【速報解説】ニデック役員責任報告書、損害276億円と認定 永守氏が減損の別枠処理を拒否」で解説している。
(ガバナンス・ダイジェスト編集部)
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