有報を開示の中心に据える案に複数の委員が賛成、総会の時期は意見が分かれる 金融審WG第6回の議事録

有報を開示の中心に据える案に複数の委員が賛成、総会の時期は意見が分かれる 金融審WG第6回の議事録

金融庁の金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ(以下「WG」)が2026年9月4日に開いた第6回会合の議事録が公開された。この会合では日本IR協議会とノルウェー政府年金基金の運用主体であるNorges Bank Investment Management(以下「NBIM」)が報告しており、その内容は既に別の記事(世界最大級の運用機関が指摘した「日本の開示」の構造課題──金融審DWGにNBIM・日本IR協議会が登場)で整理した。議事録で新たに分かったのは、報告を受けた委員の議論である。複数の委員が有価証券報告書(以下「有報」)を開示の中核に置く考えを述べた一方、有報を株主総会の3週間前までに出すために総会の時期を動かすかどうかでは、意見が分かれた。報告と議論を突き合わせた読み解きは、解説記事(有価証券報告書は開示の中核になれるのか──金融審ディスクロージャーWG第6回を読む)で扱う。

基準日の位置で、有報の提出から総会までの間隔が変わる
基準日の位置で、有報の提出から総会までの間隔が変わる(ガバナンス・ダイジェスト編集部作成)

![基準日の位置で、有報の提出から総会までの間隔が変わる(編集部作成)](img_基準日と総会の日程.png)

目次

何が起きたか

  • 有報の位置づけでは、複数の委員が有報を中核に置く考えを述べ、統合報告書などを補完に回す案や、同じ内容を写さず該当箇所を参照させる案が出た。欠席した委員1人の意見書は、対話型の情報まで有報に集約すると、投資家が期待する保証と実際の保証の対象にずれが生じうると指摘した(注1)。
  • 総会時期では、企業の実務に携わる委員が、有報を総会の3週間前に開示するなら、実務負担と会計監査人との調整から総会の後ろ倒しを検討せざるを得ないと述べた。意見書と別の委員は、決算日後3か月以内の総会を前提にすべきだとした。
  • 作り手の組織では、媒体ごとに担当部署が分かれ、記述の整合が取れていないとの指摘が複数の委員から出た。

ポイント

議論の中心は、有報を中核とするかどうかよりも、中核とした場合に何を載せ、その情報にどこまで責任と確認が及ぶかに移っていた。賛同した委員は、有報が制度開示として信頼性が高いこと、監査を受けること、EDINETで過去分まで検索できることを挙げた。慎重な側は、載せる範囲が広がるほど法定開示の責任と保証への期待が及ぶ点を問題にした。

総会時期は、複数の変数が連動する。有報は事業年度の経過後3か月以内に提出し、基準日の株主が権利を行使できるのは基準日から3か月以内であるため(注2)、基準日を決算期末に置く現行の実務では、有報の提出と総会がともに期末から3か月前後に集まる。NBIMの発表者は、基準日を期末の3週間後にずらして有報を総会の3週間前までに出す方法を一つの選択肢としたが、総会だけを動かすのは唯一の解ではなく、内容の合理化と重複の除去を並行しなければ報告書は膨らむだけだとも述べた。WGは次の報告書を2027年6月頃までにまとめる予定で、見直し後の有報は2028年3月期からの適用を想定している。

実務への示唆

実務上のカギは、何を有報へ寄せるか、その情報にどこまで責任と確認が及ぶかが未定の点にある。制度の結論を待たずに企業が決めておけるのは、記述を有報へ移す基準、参照させる記述の確認の線、総会日程を比べる物差しの三つである。

  1. 有報へ移す記述の基準を、投資判断への重要性と、事実か将来の見通しかで持つ。例えば、資本コストの算定結果や取締役会の実効性評価の結果のように事実と数値で示せる記述は有報で書き切り、価値創造の物語や対談は任意開示に残すことが考えられる。
  2. 参照させる記述の確認の線を、有報の本文と同じ手続きに揃える。例えば、有報から参照する統合報告書や招集通知の箇所を特定し、その箇所だけは開示委員会の審査、監査役の確認、数値の突合を有報本文と同じ手順で行うことが考えられる(編集部の考え)。
  3. 総会日程は、有報の前倒しと基準日の後ろ倒しを並べ、自社の監査完了日から試算しておく。例えば、現行の基準日のまま有報を総会の何日前まで出せるかを会計監査人と監査役の日程から割り出し、次に基準日を期末の3週間後にした場合の定款変更、期末配当の基準日との関係、招集通知の発送日を並べることが考えられる。基準日の後ろ倒しの定款変更を実施した会社は、2025年4月から2026年5月15日までの適時開示で4社にとどまる。

注

  1. 議事録のページには掲載日の表示がない。欠席した委員の意見書は、配付資料3として金融庁のサイトで公開されている。委員の発言は議事録により、氏名は出さず、立場は本人が議事録で述べた範囲に限った。
  2. 議決権行使基準日の株主が行使できる権利を基準日から3か月以内に行使するものに限る旨は、会社法第124条第2項に定める。有報の提出期限は金融商品取引法により、事業年度の経過後3か月以内である。図の日数は編集部による概算で、基準日を期末の3週間後に置き、総会を基準日から3か月以内に開く場合を示す。

出典

(ガバナンス・ダイジェスト編集部)

見出し画像:Pexels/Werner Pfennig。図:ガバナンス・ダイジェスト編集部作成

文:ガバナンス・ダイジェスト編集部

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