会計不正の公表は40社に減少──それでも「大型化」が止まらない、JICPA動向調査2026年版を読む

不正事例分析 会計不正の傾向

日本公認会計士協会(JICPA)は7月16日、経営研究調査会研究資料第13号「上場会社等における会計不正の動向(2026年版)」を公表した。2026年3月期に会計不正を公表した上場会社等は40社と、増加が続いていた前年の50社から減少に転じた。一方で、この1年はニデック(東証プライム、6594)の会計不正をはじめ市場の注目を集める大型事案が相次いでおり、件数の落ち着きをもって安心できる状況ではない。監査役等の視点からこの調査をどう読むかを整理する。

目次

何が起きたか

JICPAが上場会社等の公表情報を集計した本調査によれば、会計不正を公表した会社は2026年3月期で40社。2022年3月期の33社から前年の50社まで増加傾向が続いていたが、5年ぶりに減少した。2022年3月期からの5年間の累計では205社にのぼる。

不正の類型では、2026年3月期に公表された会計不正のうち粉飾決算が74.1%を占め、資産流用を大きく上回る構図が続く。業種別(5年累計)では、サービス業が49社(23.9%)で最多、情報・通信業が25社(12.2%)で卸売業(23社)を抜いて2位に浮上した。発覚経路は当局の調査等、内部統制等、内部通報が上位を占めている。

ポイント

件数の減少と裏腹に、事案の「重さ」は増している。この1年は、当メディアでも取り上げたニデックのように、第三者委員会調査や有価証券報告書の提出期限延長にまで至る大型事案が目立った。粉飾決算は組織的に、あるいは経営者の関与の下で行われることが多く、発覚すれば監査役等の責任問題に発展し得る類型である。件数の増減よりも、「自社で同じ構図が起こり得ないか」を点検する材料として読むことに、この調査の価値がある。

情報・通信業の浮上も示唆的だ。成長スピードの速い業種では、業績プレッシャーと管理体制の整備の遅れが同居しやすい。業種特性と不正リスクの関係は、監査計画の力点を考える手がかりになる。

実務への示唆

  1. 会計は「監査法人にお任せ」にしない:会計監査人が行うのは財務諸表の監査であり、会社そのものの監査ではない。数字には表れない現場のプレッシャーや経営トップの言動こそ、日常的に役員や現場に接している監査役等だからこそ掴める領域である。例えば、予算策定プロセスの確認(現場の実力とかけ離れたトップダウン予算になっていないか)や、事業部門へのヒアリングで達成圧力の実態を尋ねることを、監査計画の定例項目に加えてみることが考えられる。
  2. 会計監査人との「平時の連携」を具体化する:不正の発覚経路の上位には内部統制や内部通報が入っており、監査役等・内部監査・会計監査人の三様監査が機能するかどうかが分かれ目になる。例えば、会計監査人との定例会合を形式的な報告聴取で終わらせず、「今期、監査上のリスクをどこに見ているか」「気になる兆候はないか」を双方向で交換する場に設計し直す──といった運用の見直しが考えられる。
  3. 業種別の傾向を自社の監査計画に引き付ける:情報・通信業の浮上のように、調査には業種ごとのリスクの偏りが表れている。自社の属する業種・ビジネスモデルに近い事案がどの類型で起きているかを確認し、監査計画の重点領域の見直しに使うのも一案だ。

なお、監査役等の具体的な対応策については、日本監査役協会が7月に公表した「監査役等による会計不正への対応」が実践的な手引きになる。

出典

(ガバナンス・ダイジェスト編集部)

文:ガバナンス・ダイジェスト編集部

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