金融庁と東京証券取引所は2026年7月21日、コーポレートガバナンス・コードの改訂版を確定しました。2021年以来5年ぶりの改訂で、基本方針は「形式から実質へ」。上場企業は2027年7月末までに、改訂内容を反映したコーポレート・ガバナンス報告書の提出が求められます。本稿では改訂の全体像と、主管部門がいま着手すべき準備を整理します。
何が起きたか
- 2026年7月21日、金融庁・東証が改訂コーポレートガバナンス・コードを確定・公表
- 2025年10月から有識者会議で議論が進められ、2026年4〜5月のパブリックコメントには147の個人・団体が意見を提出
- 原則のスリム化と、新設の「解釈指針」により、形式的な遵守から実質的な取り組みへの転換を促す内容
- 改訂を反映したコーポレート・ガバナンス報告書の提出期限は2027年7月末(各社の状況により最初の定時株主総会後の提出も選択肢)
改訂の3つの柱
1. 成長投資の促進
今回の改訂の看板です。取締役会に対し、会社の成長戦略の構築と、設備投資・研究開発・知的財産・M&Aといった経営資源配分の説明が求められます。近年の資本市場との対話は、政策保有株の縮減や株主還元といった「守り」の資本政策に議論が偏りがちでした。改訂コードは、その先にある「稼いだ資本を何に投じて成長するのか」を取締役会が自らの言葉で説明することを要請しています。
2. 有価証券報告書の早期開示
株主総会の「3週間以上前」の開示が最も望ましいとされました。総会前に有報の情報を株主の議決権行使に活かせるようにする狙いです。ただし、現行の「総会後に有報提出」という実務からの転換は容易ではなく、決算・監査スケジュールの前倒しや総会日程の見直し、場合によっては定款変更まで視野に入れた、段階的な検討が現実的です。
3. 取締役会・事務局の機能強化
実務層に最も直接影響するのがこの柱です。特に取締役会事務局(コーポレートセクレタリー)について、単なる会議運営の事務対応ではなく、議題設定への関与や社外取締役への情報提供といった「能動的な運営」への期待が明記されました。事務局の位置づけをここまで踏み込んで扱うのは、従来のコードにはなかった点です。
「解釈指針」とは何か
今回新設された解釈指針は、各原則の趣旨や考え方を示す文書です。原則本体をスリム化する一方、その意図を指針で丁寧に示すことで、「文言どおりに形だけ整えるコンプライ」ではなく、自社の状況に即した実質的な対応(またはエクスプレイン)を促す構造になっています。コンプライ・オア・エクスプレインの運用が「説明の質」で評価される方向に一歩進んだ、と読むべきでしょう。
実務への示唆
- CG報告書の更新期限(2027年7月末)から逆算し、取締役会・委員会での審議スケジュールと社内体制を今期中に設計する
- 「成長投資の説明」は次期中期経営計画・統合報告書の記載と直結する。IR・経営企画と主管部門の連携協議を早めに開始する
- 取締役会事務局の役割拡大は担当部門の人員・スキル計画に影響する。まず事務局機能の現状評価(議題設定への関与度、社外取への情報提供の実態)から着手したい
- 解釈指針の新設により、他社の記載を流用した「定型文コンプライ」はかえって目立つ。既存のCG報告書の記載を「自社の言葉になっているか」の観点で棚卸しする
出典:金融庁「コーポレートガバナンス・コード(2026年改訂版)の確定について」
(ガバナンス・ダイジェスト編集部)

