東京証券取引所(東証)が2026年8月21日に始めた「グロース市場の発展に向けた検討会」は、上場維持基準の見直しの先にあるグロース市場のあり方を議論する会議である。本記事は第1回の論点を整理し、末尾に開催状況と続報の記事を置く(随時更新。最終更新:2026年10月29日)。検討会は8月21日の第1回、9月16日の第2回を経て、第3回を12月7日に開く予定である。
東証は8月21日、「グロース市場の発展に向けた検討会」の第1回会合を開催した。グロース市場を巡っては、2025年9月に上場維持基準を「上場10年後に時価総額40億円」から「上場5年後に100億円」へ引き上げる見直しが公表されており、今回の検討会はその先の市場のあり方を、上場企業・スタートアップ・投資家など幅広い関係者で議論する場となる。8月6日の東京証券取引所の市場区分見直しフォローアップ会議(第29回)にも進捗が報告されており、グロース改革は次の段階に入った。
何を議論するのか
検討会の狙いは、グロース市場を企業規模や上場後の経過年数にかかわらず「高い成長」を目指す企業が集う市場とすることにある。第1回は上場企業の視点から、グロース上場企業のあるべき姿、5年100億円の上場維持基準への適合に向けた成長戦略、成長方針の投資家への伝え方、市場の課題と必要な環境整備が論点となった。グロース上場企業へのアンケート結果や、企業経営者らメンバーによる説明資料、議事録もあわせて公表されている。
第2回以降は未上場スタートアップの視点に移り、IPOを目指す企業のあるべき姿や、成長戦略におけるIPOの活用が議論される予定だ。テーマに応じて参加者を機動的に入れ替えながら継続的に議論する運営とされており、グロース市場の制度・環境整備の方向性はこの検討会の議論から形作られていくことになる。
ポイント
上場維持基準の引き上げは、グロース上場企業にとって「5年で時価総額100億円」という明確な期限付きの目標が置かれたことを意味する。検討会の設置は、基準というプレッシャーだけでなく、成長を支える環境整備をセットで進めるという東証の姿勢の表れといえる。一方で、基準への適合が難しい企業の選択肢(スタンダード市場への移行や非公開化を含む)を巡る議論も、今後具体化していく可能性がある。時価総額100億円という水準それ自体は目指すべき目標としたうえで、より本質的には、その規模に見合う成長ストーリーと資本市場との対話をどう作るかが各社に問われることになる。
実務への示唆
- グロース上場企業は「5年100億円」からの逆算を早めに:例えば、現在の時価総額と基準適合期限までの残り年数から必要な成長率を試算し、それを実現するエクイティストーリー(事業成長・資本政策・IR)が今の中期計画と整合しているかを点検してみることが考えられる。ギャップが大きい場合、増資や M&A を含む資本政策の選択肢、あるいは市場選択そのものの検討が必要になる。
- 検討会の資料は「投資家がグロース企業に何を求めるか」の教材になる:公表されたアンケート結果やメンバー説明資料には、成長方針の開示や投資家との対話への具体的な問題意識が表れている。例えば、IR資料の構成を見直す際に、検討会資料で指摘されている論点(成長投資の説明、基準適合への道筋の示し方など)をチェックリストとして使うのも一案だ。
開催状況と続報(随時更新)
| 回 | 開催日 | 主な論点 | 当サイトの記事 |
|---|---|---|---|
| 第1回 | 2026年8月21日 | 上場企業の観点。グロース上場企業のあるべき姿、5年100億円基準への適合に向けた成長戦略、成長方針の投資家への伝え方 | 本記事 |
| 第2回 | 2026年9月16日 | 未上場企業の観点。IPOは手段、形式的な役員選任への批判、上場審査の軽重 | 東証グロース検討会、2回の議論を公表 「市場変更で上場を続けられる」認識の広がりに投資家が懸念(10月22日) |
| 第3回 | 2026年12月7日(予定) | 課題と施策の洗い出し | 開催後に追記 |
出典
- 東京証券取引所「第1回『グロース市場の発展に向けた検討会』の開催について」(2026年8月21日)および同検討会資料 https://www.jpx.co.jp/equities/follow-up/05.html
(ガバナンス・ダイジェスト編集部)

