リード
アクリート(東証グロース、4395)は10月22日、特別調査委員会の調査報告書を受けた再発防止策と、その実行を担うリスク・コンプライアンス委員会の設置を取締役会で決議したと開示した。あわせて、代表取締役社長が月額報酬の10%を3か月間減額することも公表した。
これまでの経緯
同社は2025年10月から2026年4月にかけて、コンテナ型データセンター等の売買7件(売上計35億524万円、税抜)を、対価の総額で売上計上した。前任の監査法人が2026年5月に不適切な取引の疑いを指摘し、6月に監査契約の解除を決議したため、同社は7月31日に特別調査委員会を設置した。9月28日に受領した報告書(要約版)は、取引は実在し、架空取引にも不正な循環取引にも当たらず、経営者による意図的な粉飾を認めるに足りる証拠もないとしたうえで、総額計上は誤りで財務諸表の訂正を要すると結論づけた(注1)。
何が起きたか

- 発生原因:会社は報告書の指摘を、新類型取引の会計処理に関する組織的検討の欠如、取締役会の指摘事項のフォローアップや契約書類・証憑管理などの不備、会計監査人との協議の不十分さの3点に整理した。
- 再発防止策:新類型取引と一定金額以上の取引は、経理部門の書面検討と会計監査人との事前協議を稟議の必須要件とする。取締役会と監査等委員会の指摘への対応状況を一覧化し、新委員会が取締役会に報告する。一定金額以上の契約の法務審査、稟議規程と与信管理規程の改定、会計監査人との重要な協議の文書化も盛り込んだ。2026年11月末までに体制の整備を終え、順次運用を始める。
- 新委員会:委員長は代表取締役またはその指名する者で、委員は常勤取締役、監査等委員、部長、法務責任者、外部専門家とし、隔週で開催する。
- 報酬減額:取締役会の決議により、本人の申し出に基づいて代表取締役社長の月額報酬を10%、3か月間減額する。会社は「経営責任を明確にするため」としている。
ポイント
会社は、報告書の指摘を受けた再発防止策と同じ日に、役員報酬の減額も公表した。対象は代表取締役社長の月額報酬で、減額の幅は10%、期間は3か月、本人の申し出に基づく。基本報酬の12か月分に対しては0.3か月分、約2.5%にとどまる(編集部の試算)。
開示は、減額の理由を「経営責任を明確にするため」とするだけで、何に対する責任かを示していない。報告書は役員の法的責任の認定を目的としないと明記し、意図的な粉飾を認めるに足りる証拠もないとした。減額は、法的責任の認定でもなく、再発防止策の成否に連動する報酬でもない。社長自らが示す結果責任の表明という位置づけに読める(編集部の推察)。取締役会が、この減額の幅と期間をどのような考え方で整理して決議したのかは、開示から分からない。
実務への示唆
実務上のカギは、社長の報酬減額を「責任のとり方」として説明できるようにし、そのうえで、再発防止策が動いているかを取締役会が確かめ続ける形にすることである。今回の減額は幅も期間も小さく、再発防止策の成否とも結びついていない。そこで、責任の整理、報酬の仕組み、運用の点検の3点を見直す。
- 「何の責任で、なぜこの減額か」を取締役会が整理し、開示する。 同社は「経営責任を明確にするため」と書くだけで、何の責任なのかは書いていない。体裁を整えるための減額なのか、代表取締役の責任のとり方として妥当と判断したのかは、開示から分からない。例えば、責任の対象(会計処理の誤りが起きたこと、報告書が指摘した「確認が行われなかったこと」への監督)と、10%・3か月とした理由を議事録に残し、要点を開示する。
- 報酬の仕組みを、再発防止策とつなげる。 今回の減額は1回限りで、再発防止策の成否には関係しない。同社の報酬は基本報酬、年次業績連動賞与、譲渡制限付株式報酬の3つで、株式報酬にだけ、非違行為があれば株式の返還を求められる条項(クローバック条項)がある。賞与には同じ定めが見当たらない。例えば、賞与にも次の2つの定めを置く。支払う前に不正が分かった場合に、支払いを減らす、または止める(マルス)。支払った後に分かった場合に、返してもらう(クローバック)(注2)。再発防止策の達成度を、賞与の評価項目に入れることも考えられる。また、同社には、役員の指名や報酬を社外取締役が中心となって議論する委員会(指名・報酬委員会)がない。社長自身の責任にかかわる減額や返還の判断は、そうした委員会で議論するほうが、客観性を保ちやすい。
- 新しい委員会の運用を、取締役会が定期的に点検し、開示する。 リスク・コンプライアンス委員会は、委員長が代表取締役またはその指名する者で、執行側の組織である。再発防止策が動いているかは、取締役会が別に確かめる必要がある。例えば、取締役会の実効性評価の項目に「今回の事案後の改善状況」を加え、体制が整う11月末以降、四半期ごとに運用状況の報告を受ける。結果と改善の経過は、コーポレート・ガバナンス報告書や統合報告書で外部にも開示する。
注
- 特別調査委員会は、日本弁護士連合会の「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」に準拠して設置された第三者委員会ではないと報告書は記している。委員長には会社と利害関係のない外部の弁護士を充てた。公表されたのは要約版で、原報告書の全文は東京証券取引所、関東財務局及び会計監査人に提示されている。
- 本稿では、支給前の報酬を減額又は不支給とする仕組みを「マルス」、支給後の報酬の返還を求める仕組みを「クローバック」と呼ぶ(編集部の整理)。減額の試算は、月額報酬の10%を3か月減額した場合の減額分0.3か月分を、基本報酬12か月分で割ったもの(2.5%)で、月額報酬の金額は開示されていない。同社の報酬体系は、基本報酬、年次業績連動賞与、譲渡制限付株式報酬である。
出典
- アクリート「再発防止策の策定及びリスク・コンプライアンス委員会設置に関するお知らせ」(2026年10月22日) https://www.release.tdnet.info/inbs/140120261022554759.pdf
- アクリート「役員報酬の減額に関するお知らせ」(2026年10月22日) https://www.release.tdnet.info/inbs/140120261022554777.pdf
- アクリート「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」(2026年6月2日縦覧、東京証券取引所) https://www2.jpx.co.jp/disc/43950/140120260602560269.pdf
- アクリート「特別調査委員会の調査報告書受領及び公表に関するお知らせ」(2026年9月28日。別添:調査報告書〔要約版〕) https://www.release.tdnet.info/inbs/140120260928541370.pdf
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(ガバナンス・ダイジェスト編集部)
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